「ほらリナ、しっかりしろ」
「ふにー」

 ガウリイに支えられ、リナは宛がわれた部屋へと辿り着くと、そのままベッドに腰掛けた。
 そこそこ広い部屋にはベッドや鏡台が置かれ、奥にはお風呂まで付いていると言う、そこらのお高い宿よりもずっと贅沢な仕様だ。
 それもそのはず。
 何せリナとガウリイは、今日はセイルーンの第二王女であるアメリアの客人として、この城に赴いているのである。

 誕生日パーティーをやるから来てほしいと、アメリアから連絡が来たのが一月以上前の事だった。
 プライベートなものだからと言うので、久しぶりに顔を見に行くか、くらいの気楽さで訪れたリナとガウリイだったが、そこで行われたものは、二人の知る誕生日パーティーとは程遠いものだった。
 豪華な部屋には、煌びやかに着飾った人々で埋め尽くされ、優雅な音楽が流れ、なぜかダンスを踊っている人たちもいる。
 当然、リナたちも普段の格好で、などと言う訳にはいかず、用意されていたパーティードレスにタキシードを着る羽目になった。
 アメリアにハメられたのだろうか、とも思ったが、どうやら違うらしい。
 最初は、本当に極々ささやかなパーティーを予定していたみたいだが、話が勝手に広まり、参加をしたいと名乗りを上げる人たちが後を絶たなかったようだ。
 さすがはセイルーンの第二王女、と言ったところか。
 今日はゆっくりアメリアと話すことも出来ないだろうと悟ったリナとガウリイは、せめて美味しい食事を堪能することに目的を変えた。
 アメリアとは、明日またゆっくり話すことも出来るだろう。
 一流の食材を使った贅沢な食事は、どれを食べても美味しくて、ついついフォークも進む。
 お祝いにと注がれたお酒も飲みやすく、勧められるがままに飲んでいたら、あっという間にリナは出来上がってしまったのだった。

「大丈夫か? 水飲むか?」
「のむー」

 リナが頷くと、ガウリイはナイトテーブルに置かれていた水差しからコップに水を注ぐ。
 その間リナは、靴でも脱ごうと思ったが、酔っているせいか思うようにいかない。

「んー・・・脱げない。がうりい、靴脱がせてぇ」
「ああ、こら、そんなに暴れるな!」

 リナの所に戻ってきたガウリイは、両足をバタバタさせるリナを宥めて、そっと靴を脱がせる。
 ガウリイがやると、なぜか靴はすんなりリナの足から離れていった。

「ストッキングも」
「バカ言うな」
「いいもん。自分で脱ぐもん」

 口を尖らせ、リナはスカートの中に手を突っ込んだ。

「あっ、こらリナ!」

 ガウリイが止めるより早く、リナはストッキングを下ろすべく両足を上げる。
 慌てて、ガウリイはリナに背中を向けた。

「あれ〜」

 ガウリイの態度に、リナはくすくすと楽しげに笑う。

「どうしたのガウリイ? 欲情しちゃった?」
「そんなんじゃない」

 背中を向けているため表情までは分からないが、珍しく突き放すような言い方に、余計に笑いが込み上げてきた。
 お酒のせいだろうか?
 ストッキングを脱いで、髪も解くと、ようやくすっきりして、リナはそのままベッドに倒れ込んだ。
 目を閉じると、心地よい睡魔に襲われる。

「リナ、そのまま寝るなよ」

 揺さぶられ、目を開けると、ガウリイがリナの顔を覗き込んでいた。

「服が皺になるんだろ?」
「うーん・・・眠いの・・・じゃあガウリイ脱がせてよぉ」
「お前さんな・・・分かったから、とりあえず水でも飲めって。な?」

 なにか言いたげなガウリイだったが、酔っ払いの戯言として受け流すことに決めたのだろう。
 優しく促され、リナは渋々起き上がると、水を受け取ろうと手を伸ばした。
 が、目算を誤った。
 リナの手はコップを掴み損ない、落下したそれは彼女の足に当たって床へと落ちる。

「つめたっ」

 冷えた水が、リナの足に零れた。
 白い肌が滴を弾き、透明な跡を残して彼女の足を伝う。

「ああ、もう・・・。服濡れちゃったかな? ねえガウリイ、なにか拭くもの・・・」

 そこまで言いかけて、ふとリナは、ガウリイがいつもと様子が違うことに気が付いた。
 湖の底みたいに彩度の低い青い瞳が、冷たく揺れる。

「ガウリイ・・・?」

 名前を呼んだ、その瞬間、リナの体がベッドに沈み込む。
 押し倒されたのだと理解するのに、少しだけ時間がかかった。
 ガウリイはリナの足を高々と持ち上げると、ふくらはぎに唇を寄せる。

「っ・・・!」

 思わず、リナは息を呑んだ。
 ガウリイの舌が、ゆっくりと彼女の足を舐め上げていくと、ぞくぞくと背筋が粟立つ。
 啄むようなキスをして、唇は離さないまま、ガウリイの舌はアキレス腱を甘噛みし、足の甲へと移動する。

「やあ・・・がう、り・・・」

 零れた滴を丁寧に拭いながら、ガウリイはリナの足の親指を口に含んだ。

「だめ、きたない、よぉ・・・」

 生温かな口の中で、蠢く舌が彼女の指を舐めつくす。
 指と指の間を舐められると、びくんと、体が撥ねた。
 お酒のせいだろうか。それとも、足を舐められていると言うシチュエーションのせいだろうか。
 いつもよりも、ずっと感覚が鋭敏になっている気がする。
 ちゅぽっと、音を立ててガウリイの口が指から外れる。
 薄明りの下、その指はぬるぬると、淫靡にてかっていた。

「はあっ・・・」

 知らず、ため息が漏れる。
 音を立てて口付けを繰り返しながら、ガウリイの眼差しがリナを見下ろした。
 まるでリナの反応を確かめるような瞳に、ぞくりと、全身に鳥肌が立つ感覚がする。
 無意識に、リナは太腿を擦りあわせる。
 たったそれだけのことで、彼女は自覚した。自分のそこが、どうしようもなく潤っていることに。
 リナの思考を読み取ったように、ガウリイの掌が太腿の内側を撫でる。

「んっ・・・」

 びくりと、リナは体を震わせた。
 冷たい指が、彼女の熱を更に高めようと、じれったく動く。

「がう、りい・・・」

 たまらず、彼の名前を呼ぶと、ガウリイが小さく笑った。

「どうしてほしいんだ?」

 分かっているくせに、意地悪くガウリイは聞いてくる。
 太腿の皮膚の薄いところをちろりと舐め、足の間から見上げる双眸には、物欲しそうな表情のリナが映っていた。

「さわって、ほしい・・・」
「どこを?」
「もっと・・・うえの・・・」

 直接的なことは、どうしても言えなかった。
 おねがいと、瞳を涙で潤ませれば、仕方ないと言いたげにガウリイが彼女のそこに触れる。
 下着ではもう隠し切れないほど濡れていることを確認すると、くすりと笑いを漏らした。

「足を舐められて、感じたのか?」
「そんな、こと・・・」
「じゃあ、どうしてもうこんなに濡れてるんだ? なあ、リナ?」

 下着の紐を口で咥えて、ゆるゆると解いていく。
 片方が解けると、リナの大事な部分を隠すものは、もうなにもなくなった。
 片足に残る下着を適当に追いやり、ガウリイはリナの秘部にふうっと息を吹きかける。

「ひゃんっ!」

 小さな悲鳴を上げて、リナは体を竦ませた。
 物欲しそうに腰が揺らいでしまうのを、すでにリナは自分の意志で止めることが出来ないでいる。

「がうりいの、いじわる・・・」

 拗ねた様に呟くと、困ったようにガウリイが笑う。

「どっちがだ。散々人を煽っておいて」
「そんなつもりじゃ・・・きゃんっ!」

 くちゅっと、音を立てて彼女の中に指が埋め込まれた。
 十二分に湿ったそこは、ガウリイの指を簡単に飲み込み、更に奥へと誘い込む。

「こんなにぬるぬるにして、いやらしいな、リナのここは」
「やっ、いわない、でぇ・・・」

 恥ずかしさで顔が赤くなる。
 顔を逸らして唇を噛み締めるが、与えられる快感には到底抗えない。

「それで、どうするんだ?」

 意地悪く唇の端を歪ませるガウリイを見て、リナはむうっと口を尖らせると、思いっきり髪の毛を引っ張った。

「いてて、おいリナ」
「ガウリイのバカ! 早く挿れてよ・・・」

 後半は消え入りそうな声で、リナがそう呟くと、ガウリイがふっと微笑んだ。
 その顔はいつものガウリイで、なんとなくリナはホッとする。

「仰せのままに」

 リナの両足を優しく抱き上げ、ガウリイは彼女の足の奥の泉に自分のモノを宛がうと、ゆっくりと貫いた。

「うっ、くぅん・・・」

 じわじわと感じる圧迫感に、リナはガウリイの首にしがみついた。
 一番奥まで挿入されると、ガウリイはリナの頬に軽くキスをして、腰を動かす。

「はっ、あっ、あっ、んっ」

 揺さぶれる度に、あられもない声が漏れた。
 奥を突かれると、じんじんとした熱が体の底から込み上げてきて、リナはガウリイのものをきゅっと締め付ける。

「リナっ・・・」
「はあっ、がう・・・りっ・・・」

 何度も何度も奥を突かれ、すでにリナの限界も近かった。

「あたし、もっ・・・」

 その声に、ガウリイの動きも激しさを増す。
 流されそうになるのを必死で堪えるように、リナはガウリイの背中に力一杯しがみ付いた。

「あっ、ああああああ!」

 視界が、脳裏が、記憶が、全てが白く焼き尽くされる。
 体の中で、熱いモノが放たれるのを、リナはぼんやりと感じていた。





「いきなりするなんて、最低」

 ドレスから寝間着に着替えたリナは、ぶつぶつと文句を口にする。
 それを聞いて、ガウリイは困ったように笑った。

「そんなこと言われてもな、これでも我慢した方なんだぞ」
「どこがよ。ストッキング脱がせてって言ってから、そんなに経ってないじゃない」
「そこからじゃなくて」

 リナの台詞を、ガウリイはさらりと否定する。

「お前さんが、ドレス着てきた時から」

 そう言えば、あの時のガウリイはちょっと様子が変だった。
 ぼんやりとして、リナが何を言っても上の空で。

「我慢しただろ?」

 にっこり笑うガウリイに、リナは頬を赤らめて毛布を口元まで引き上げる。

「変態」

 リナの呟きに、しかしガウリイは堪えた様子も見せる、嬉しそうに笑っていた。








彼女のすべてを味わって







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