獣姦注意。










「お待たせしました。盗まれていた研究資料です」
「おおお、ありがとうございます。まさか、こんなに早く戻ってくるとは・・・」

 あたしの差し出した資料の束を、魔道士教会の評議長さんは丁寧な手つきで受け取った。
 まだ五十前だと言うこの若い評議長さんは、威厳こそまったくないけれど、身につけた上等なローブはそこそこ様になっている。
 顔がいいからきまっているだけなのだろうけど。

「それから、犯人の男はこらしめて、街の警備兵に預けておきましたから」
「なにからなにまで、ありがとうございます。さすが、世に名高いリナ=インバースさんだけのことはありますな。それはそうと・・・」

 と、そこで言葉を切り、評議長さんはあたしの隣に視線を送った。
 不思議そうに首を傾げ、おずおずと指を差す。

「連れの剣士の方はどうされたのですかな? と言うか、なんで犬がいるんですか?」

 あたしはジト目で、評議長さんの指差す方向を見る。
 そこには、見事な金色の毛並みをした大きな犬が、ちょこんとソファに座っていた。

「わん!」

 あたしと目が合い、犬は尻尾を振りながら嬉しそうに鳴く。
 あたしは思わず、盛大なため息を吐きだしていた。





 話せば長くなることながら、話さなければなるまい。
 あたしと連れのガウリイが、ここ――ローセンタウンに付いたのは、ちょうど三日前のこと。
 いつものように、魔道士協会へと挨拶に行ったあたしたちを出迎えたのは、評議長のライゼルン=ロットさんだった。
 あたしが名乗ると、ライゼルンさんは途端に深刻な顔になり、あたしたちに頼みたいことがあると切り出したのである。
 なんでも一週間ほど前、協会で保管していた貴重な研究資料が、盗まれてしまったらしいのだ。
 しかも、協会で働いていた人間によって。
 このことが領主の耳に入ったら、監督不行届きとして、怒られるのは必須。
 どころか、犯人も研究資料も戻らなかったら、評議長の地位も危うい。
 青くなっているところで、たまたまあたしがやってきたのだそうだ。
 そんな面倒な話、正直断りたかったのだが、隠密と言うことで依頼金がそこそこ良かったこと。
 資料が戻ってきたら、特別にあたしにも見せてくれると言うことなので、手を打ったのだ。

 と言っても、どこにいるのかも分からない人間を探すのは骨が折れる。
 一週間も経っていれば、さすがに街からは逃げ出しているだろう・・・と、普通の人なら考えるところなのだろうが、ならば逆に、相手が裏をかいてここに留まっている可能性もある。
 そこであたしとガウリイは、その男がよく出入りしていた店を中心に聞き込みを開始し、案の定、男がまだこの周囲に留まっていることを付き止めたのだ。
 なんでも、もう何十年と人の住んでいない廃屋を、勝手に改造して住み着いているらしい。
 下見がてら、家の場所を確認しに行ったら、タイミングよく、家の前で男とはち合わせたのだ。
 後の展開は速かった。
 男が家の中に逃げ、あたしとガウリイが追いかける。
 ここで少し説明をしなければならない。
 男は魔道士協会で、ある研究に明け暮れていた。
 それは、想像や幻を限りなく現実に近付けるための研究である。
 詳しい説明は省くが、最終的には、想像上の存在を現実化させることが目的だったらしい。
 もちろん、そんな滑稽なことが実現するはずもないのだが、少し見方を変えて、本当にそこにあるよう『錯覚』をさせることなら可能なのだと思う。
 当然それだって、簡単なことではない。
 しかし男は、その簡単なことではない実験を、八割がた成功させているようだった。
 男が逃げた先――おそらく、男の研究所なのだろう。
 そこで、必死で装置を動かす男に、飛びかかるガウリイ。
 だが、ガウリイの一撃が男を昏倒させるより、装置が動く方が早かった。





「つまり、ここにいる犬は錯覚で、本当はあなたの連れの剣士・・・と言うことでいいんですか?」
「はい、まあ・・・そう言うことになります・・・」

 あたしの説明を聞き、評議長さんは首を傾げた。
 しかし、男の研究のことは聞き及んでいたのだろう。
 割り合いあっさり現実を飲み込む。

「なるほど。いやしかし、これはなかなか興味深いですな。そう言う研究をしていたのは知っていましたが、ここまでとは・・・。恐らく夢幻覚の応用なのでしょうが・・・うーん、実に惜しい才能だ」

 ぽふぽふと、評議長さんは犬――もとい、ガウリイの頭を軽く叩く。

「手触りまで犬の毛並みそのものですね」
「あの、これ、どうしたらいいんでしょう?」
「その装置で、元に戻せばいいだけの話ではないんですか?」
「それが・・・ちょっと色々あって・・・早い話、壊しちゃったんですよね」

 あはは〜と乾いた笑い声を上げるあたしを、評議長さんはどこか呆れた眼差しで見てきた。
 しかし、これは仕方のないことなのである。
 あの時、突然目の前でガウリイが犬に変わり、驚いたあたしは術のコントロールを少しミスって、あの装置に当ててしまったのだ。
 むしろ、ガウリイにも犯人の男にも当てなかったことを、褒めてもらいたい。

「うーん、さっきも言ったと思うんですけど、これは夢幻覚と、恐らく魅了の術も併合されてると思うんですよね・・・」
「魅了ですか?」
「はい。見たところ、お連れの剣士さんは自分が犬であることに違和感がない様子ですから、犬であると暗示をかけられているのでしょう。それが夢幻覚として、本当の犬の姿に見せている。原理は分かりませんが」

 評議長さんはそう言って、小さく肩を竦めた。
 うーん、ただの頼りないおっさんかと思いきや、なかなかやるじゃないの・・・。

「と、言うことは、ガウリイが自分が人間だって自覚したら、幻覚の方も解けると?」
「恐らく」

 大きく頷く評議長さん。
 あたしは再びガウリイに視線を向ける。
 ガウリイは、こっちの思惑なんぞまったく気付きもせずに、呑気に欠伸をしていた。





「ほらガウリイ、あんたは人間なのよ。分かるでしょ?」

 宿の一室で。
 あたしはガウリイの前に鎖の付いた宝石をぶら下げ、ゆらゆらと左右に動かす。
 ガウリイは、しばらく面白そうにそれを見ていたが、すぐに飽きたのか、立ち上がりどこかへ行こうとした。

「ああ! 待ちなさいよ!」

 慌てて首に抱きつき、元の場所へと引き戻す。

「おすわり。そう、座って。じっとしてる」

 もう、どうしろって言うのよ、一体・・・。
 評議長さんはああ言ったけれど、それはなかなか難しい取り組みだった。
 なにせガウリイは、すっかり犬になりきっていて、こちらの言うことも理解しちゃいない。

「人の言葉まで忘れてどうするのよ。このくらげ」

 わしゃわしゃと頭をかき混ぜると、ガウリイは嬉しそうに尻尾を振ってきた。
 あ〜、ダメダメ。
 不覚にも可愛いとか思っちゃったじゃない。
 時間が経てばどうにかなるかも、と言っていたけれど、それもそれでどうかと思う。
 やっぱり、少しでも早く元に戻したいし・・・。

「あ〜、止めた! おなか空いたし、下でご飯食べてくるわ」

 あたしが立ち上がると、ガウリイも一緒に付いて来ようとする。
 あたしは一度入口のところで立ち止まると、くるりと振り返った。

「言っとくけど、ガウリイは留守番よ」

 ドアを閉める直前。ガウリイが悲しそうな顔で、あたしのことを見ていた。





 下の食堂は、すっかり酒飲み場へと化していた。
 忙しそうにしていたおばちゃんが、騒がしくてごめんね〜と言いながら、カウンターを片付けてくれる。
 あたしはそこに腰掛け、軽く夜の定食を三人前頼んだ。

「連れの男の人は大丈夫なのかい?」
「あ〜・・・まあ、お陰さまで」

 すでに三日間滞在し、すっかり顔馴染みになってしまった宿のおばちゃんには、ガウリイは風邪を引いてしまったと言ってある。
 食事にも降りてこれないけど、気にしないでくれと言って。

「食べるもの、なにか用意してあげようか?」
「本当? じゃあ、お願いするわ」

 にこやかに対応しながら、でもあの格好で、ガウリイはどうやってご飯を食べるのだろうとふと疑問に思った。
 やっぱり犬食いだろうか・・・いや、それはやっぱり阻止しないと・・・。

「おう、姉ちゃん! 今日は一人かい!」

 この酒場の常連のおっちゃんが、馴れ馴れしくあたしに話しかけてきた。
 顔が真っ赤になって、すっかり出来上っている。

「はいはい。一人だからって馴れ馴れしくしないでよね。また投げ飛ばすわよ」
 あたしの台詞に、おっちゃんは豪快に笑った。  初日の夜、あたしをどこかの飲み屋のねえちゃんとでも勘違いをしたような態度を取ったおっちゃんを、投げ飛ばして黙らせたと言う経緯があるのだ。
 おっちゃんは「女房の若い頃みたいだ」と言って、なぜか機嫌が良かったが。

「あんまり若い子に絡むんじゃないよ、みっともない」

 額に汗を浮かべながら、おばさんが水を差す。

「それよりさ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 あたしがそう言うと、おっちゃんもおばさんも、きょとんとあたしの顔を見てきた。

「もしも犬になった人間がいたとして、その犬が元は人間だったって思いだすには、どうしたらいいと思う」
「なんだそりゃ」

 案の定、おっちゃんは訳が分からんと言いたげに眉を顰めた。

「あんた、吟遊詩人にでもなりたいのかね?」

 おばさんに聞かれ、あたしは曖昧に笑う。
 説明をするのも面倒なので、まあ一応・・・などと、適当な答えが口に上った。

「犬っころが人間にねぇ・・・。そんなの、一つしかねぇだろうが」
「どんな?」
「人間の女の裸を見て、ムラムラしたら人間ってことだ」
「違ぇねぇ! 犬は自分が裸だから、人間の裸なんかなんとも思っちゃいないもんな!」

 いつの間にか、集まっていたおっちゃんたちから、下卑た笑い声が上がった。
 こ、これだから酔っ払いは・・・。

「あんたたち! 若い女の子をからかってるんじゃないよ!」

 おばさんの、今日一番の怒鳴り声が、食堂中に響き渡った。





「結局収穫なしかぁ・・・」

 ぼやきながら、あたしはガウリイにおばさんに貰ったご飯を与えていた。
 おかゆを用意してくれるつもりだったらしいおばさんに、食欲はあるからと言ってローストビーフを貰って来たのだ。
 これなら、食べさせてあげるのも簡単だし。
 ガウリイは一生懸命、あたしの手からローストビーフを食べている。
 あたしは手を伸ばして、ガウリイの身体を触った。
 ただの幻覚のはずなのに、それは本物の犬の毛並みそのもので、これがガウリイなのか、実はただの犬なのか分からなくなってくる。

「早いこと思い出しなさいよね。でないとあんた、一生犬のままよ」

 最後のローストビーフを食べ終わり、あたしはお皿をナイトテーブルの上に置いた。
 これは明日、おばさんに返しておこう。

「もう寝よ。今日はなんか、疲れたし」

 宿のパジャマを引っ張り出して、あたしは服を脱いだ。
 上のシャツを脱ぎ、下のスパッツを脱いで、ふと視線を感じ、振り返る。

「!? ちょ、なに見てんのよ!」

 思わずぎょっとしたあたしは、そう叫んでいた。
 あたしの背後でガウリイが、ジーっと熱心に、人の着替えを見ていたのである。
 こいつ、今は犬の癖に!
 慌てて、パジャマの袖に腕を通す。
 焦っているせいか、ボタンが上手く止まらない。
 それでもどうにか二つボタンを止めたところで、ふいに、足元に変な感触を感じた。

「!?」

 驚いて下を見れば、いつの間にかガウリイがすぐ隣から、ジッとあたしのことを見上げている。

「な、なによ・・・」

 パジャマで前を隠しつつ、ガウリイから距離を取ると、それを追いかけるようにしてガウリイが近付いてきた。
 鼻を鳴らし、なにやら甘えたそうな素振りを見せると、突然足の付け根に鼻を押し付ける。

「バカ、どこを・・・!」

 手で押さえ、更に逃げようとした、その時、あたしは呆気なくバランスを崩して後ろに倒れ込んだ。
 いつの間にか、ベッドのすぐそばまで来ていたらしい。
 背中に、固いマットが跳ねるのを感じる。
 そこに、ガウリイが身も軽く、ベッドの上に飛び乗ってきた。

「ガ、ガウリイ・・・?」

 ガウリイはあたしの顔に鼻を近づけてくる。

「やだ、ちょっと・・・」

 逃げようとするのに、ガウリイが邪魔で動けない。
 どかそうとしても、まるでビクともしなかった。
 そうだ、犬の姿になってるけど、これはガウリイなんだ。
 大人と子供ほど体格の違うガウリイを、あたしが力づくで退かせるなんて、かなり無理がある。
 ガウリイは首筋に顔を埋める。
 息がかかって擽ったい。
 思わず身を捩ると、そのまま上に上がってきた顔が、ぺろりとあたしの耳を舐めた。

「ひゃっ・・・」

 咄嗟に上がりかけた甘い嬌声を、あたしは喉の奥で押し留める。
 ガウリイの舌が耳の淵をなぞり、そして奥まで侵入してきた。

「・・・っ!」

 ぞくぞくして、全身に鳥肌が立つ。
 やばい。ダメだ。
 どうにか逃げようともがくも、ガウリイはまるで岩のようにピクリともしない。
 ガウリイの舌が耳から離れると、今度は徐々に下へと下がっていく。
 首筋を辿り、鎖骨に触れ、胸の頂きをペロペロと舐められる。

「やんっ、なんで、こんな・・・」

 一瞬、脳裏に酒場でのおっちゃんたちの会話が思い出された。
 もしかして、あたしの裸で欲情した・・・?
 だったら、このままいけば、ガウリイが元に戻るかも・・・って、ダメ! やっぱり無理、こんなの!
 などと、あたしが一人考えている隙に、ガウリイの顔は更に下へと降りていた。
 下着の上から、生暖かい吐息を感じて、ぞくっと全身が粟立つ。

「ダメ、そこは・・・!」

 あたしが止めるよりも早く、ガウリイは器用に口で下着の紐を解いた。
 ハラリと、下着が床に落ち、覆い隠されていた場所が露わになる。
 ガウリイがそこに、顔を埋めた。

「バカ、ダメ・・・あっ、ん!」

 ガウリイの舌が、あたしの割れ目に触れた。
 まるでほじくり返すみたいに、舌が巧みにあたしの中へと侵入する。

「ひやっ、あっ、あぁん!」

 あたしは悶えながら、ガウリイを遠ざけようと彼の頭に手を置く。
 その時、あたしは気付いた。
 ガウリイの毛触りが、犬のそれとは違ってきていることに。
 それは、そう。いつもの触り慣れた、ガウリイの髪質そのものだった。
 もしかして、戻りかけてる・・・?
 あたしは閉じかけていた目をそっと開くと、ガウリイを見下ろした。
 しかし、そこにいたガウリイは、まだ犬の姿をしたままである。
 違う。ガウリイが戻ってきてたんじゃなくて、あたしの幻覚の方が溶けかけていたんだ!
 あたしは咄嗟に目を閉じた。
 だけど、さっき見た光景が、脳裏に焼き付いて離れない。
 一度意識し出すと、せっかく元に戻っていたはずの肌触りも、すっかり犬のものに戻っていた。
 大きな金色の犬が、あたしのあそこを舐め回している。
 それは、ひどく背徳的な光景だった。
 あたし、犬に犯されて、感じちゃってる・・・。

「ダメ、お願いガウリイ! もう止めて!」

 あたしの理性が全力で、ガウリイを引き離せと命じる。
 力一杯ガウリイの顔を押し返すのに、それでもガウリイは離れてくれなかった。
 ガウリイの舌が、敏感な肉芽に触れる。

「ひゃぁん!」

 身体が跳ね、奥から蜜がとろりと零れるのが、自分でも分かった。

「あん、ダメ・・・っはあ、こんなの、あぁん!」

 ダメだと分かっていながら、身体は実に素直に反応する。
 全身の力は抜け、あたしはもう、ガウリイの毛に指を絡めるだけで精一杯だった。

「ダメ、あっ、あん、あぁぁぁぁん!」

 一際高い声を上げ、あたしは達した。
 頭の中が真っ白で、くらくらする。
 全身を脱力させ、ぐったりとベッドに横になるあたし。
 もう動く気力もない身体が、今度はうつ伏せにされる。

「?」

 なんだろうと思う間もなく、今度は腰を持ち上げられた。
 えっ、待って、ちょっと・・・。

「あっ、あぁぁぁん!」

 一瞬戻りかけた意識は、突如貫かれた衝撃によって、再び吹っ飛んだ。
 あたしの中を、熱い塊が占領している。

「気持ち良さそうだな」
「ひゃん、えっ、がうりい・・・?」

 耳元で聞こえた声は、ガウリイのものだった。
 振り向いて確認しようとするが、それよりも早く、伸びたガウリイの手によって、あたしはベッドに顔を押し付けられる。

「やだ、なにするのよ!」
「なにって?」
「元に、戻ったんでしょ? 顔見せてよ」

 すると背後で、ガウリイが笑う気配がする。

「なんでだ? リナはこのままの方がいいだろ?」
「なんでよ?」
「だって、気持ち良さそうにしてたじゃないか。犬になったオレに犯されてて」

 言われて、瞬時にあたしの顔が赤くなった。
 って、

「覚えてるの!?」
「ああ、全部な。リナの可愛い喘ぎ声も、ダメダメって言いながら、感じてる顔も」
「ああああああ!」

 最悪! なによそれ!
 頭を抱えたかったけど、ガウリイの手が邪魔で、それすらも儘ならない。

「犬にもイかされるなんて、イヤらしい身体だな。お望み通り、犬みたいに犯してやるよ」
「そんなの・・・あっ、あん!」

 抗議をしようと上げかけた声も、激しく動き出したガウリイのせいで、後半は喘ぎ声へと変わっていた。
 ガウリイはあたしの腰をしっかり掴んで、ガンガン叩きつけてくる。
 それは人の手のはずなんだけど、目でそれを確認していないあたしの頭の中では、ガウリイは犬の姿のままだった。

「やだぁ、あん、ひあっ!」
「やだって、言いながら、いつもより、締まってるぞ」

 軽く息を弾ませ、ガウリイはあたしを攻め立てる。
 あられもない声を上げながら、あたしの中がいっそうきつく締まった。

「くっ、うっ・・・」

 ガウリイが微かに呻く。
 その直後、あたしの中に、勢いよく滾った熱が、ぶちまけられるのを感じた。

「ひやっ、あぁん・・・」

 その余韻に打たれながら、あたしはヒクヒクと身体を引き攣らせる。

「リナ・・・」

 ガウリイがあたしの名前を呼びながら、仰向けに引っくり返した。
 すぐに唇が塞がれる。
 あたしは大人しく、ガウリイからのキスを受け止めた。
 口内を優しくかき乱し、そっと離れていくガウリイの顔を見て、

「・・・・・・」

 あたしは言葉を失くす。

「ガウリイ・・・」

 ガウリイは、もうすっかり人間に戻っていた。
 長い髪も、無駄に整った顔も、ガウリイのものだった。
 しかし、余計なものが頭についている。
 あたしは震える手で、ガウリイの頭を指差した。

「耳が、付いてるんだけど」
「ああ」

 ガウリイは実に軽い動作で、頭に付いている垂れ耳を引っ張った。

「リナを犬のまま犯したいなぁと思ったら、こんな中途半端なことになってな」
「なってな・・・って、なにバカなこと考えてるのよ!」
「まあ落ち着けって。すぐ戻るさ、こんなの」

 まあ、確かにそうかも・・・。
 などと、あたしが納得しかけると、ガウリイが突然、意味深に笑ってみせた。

「もう一回リナを抱いたらな」
「へっ?」

 あたしが反応するより早く、ガウリイがあたしに覆い被さってくる。

「さてと、今度は人にしか出来ないようなことをやってみようか、リナ」
「やだ、なに考えてるのよ! この変態!」

 あたしの叫び声は、いとも容易くガウリイの手によって、封じられてしまった。



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