おはようとおやすみをくりかえして

サンプル2

 更に西に向かうと、唐突に建物が途切れる。
 腰ほどの高さの塀の、その向こうに広がっているのは、青い海原。

「へえ、ここからも海に出れるんだ」

 楽しげに瞳を輝かせ、リナは塀に手を掛けて身を乗り出す。
 遮るものがなにもなく、ただ海だけが一望できる光景は、圧巻だ。
 リナの故郷のゼフィーリアは内陸国であり、海はあまり身近なものではない。
 だから余計に、気持ちが昂ぶった。

「おー、いい眺めだなー」

 リナの隣に立ち、ガウリイも目を細めて海を見通す。
 水平線の少し上空まで降りてきた太陽が、海の表面にキラキラと、光の粒を落としていた。
 後数刻もすれば、夕暮れになる。
 そうなれば、この空も海も、またガラリと様相を変えるのだ。
 まるで手品みたいに。

「もうちょっとあったかかったら、海で泳げたかもね」
「いいな、それ。じゃあ次は、もっと暑い時期に来るか」

 リナの提案に、屈託なく笑ってガウリイが答える。
 その横顔を、リナはこっそりと盗み見た。
 潮風に揺れる金色の髪。陽の光を反射させて、それは宝石のように、光り輝いている。
 海の色を映しているせいか、青い双眸は、普段よりも深みを増しているように見えた。
 スッと通った鼻筋。鍛えられた体躯。
 いつの間にか、見入っていた。
 そのことに気付いてからも、目が離せなかった。

(ああ……)

 小さく、ため息が漏れる。
 自覚した。今、はっきりと。

(あたし、ガウリイのことが、好きなんだ……)

 胸中で呟くと、それまで宙をふわふわ彷徨っていた感情が、すとんと、収まるところに着地したような感じがした。
 ドキドキと、胸が早鐘を打ち出す。
 陽の光に照らされたガウリイの姿が、妙に眩しく見えて、リナは目を細めた。

「どうした、リナ?」

 リナに見られていることに気付いたガウリイが、彼女の方を向いて首を傾げる。
 そんなガウリイに、リナは小さく笑うと首を振った。

「なんでもないわ」

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